ケーススタディ

上司からの指摘を素直に受け止められない部下

あなたは某県にスーパーマーケットを12店舗経営している企業のマネジャーです。ある日、店長会議の後に実施された懇親会で、隣に座ったD店の須藤店長が、彼の上司であり、あなたの同僚の江田マネジャーの言動について話しはじめました。

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「最近、江田マネジャーの臨店の日が憂鬱なんです。江田マネジャーは店舗に来ると、いつも眉間にしわを寄せて『暇な時間帯にパートが多すぎる!!』とか、『鮮魚売り場の食卓提案が指示したものと違う!!』とか、私にばかり厳しい口調で、細かく指摘するんですよ。言ってることはわかりますが、私だって一生懸命やってるんだからもう少しソフトに接してくれてもいいと思うんですよね」という具合です。

あなたから見たD店の現況や江田マネジャーに関する見解は以下の通りです。

  • D店の人件費率は、会社の基準値よりも毎月約2%高い。
  • D店は、来店客数が同程度のE店よりも売上が5%ほど低く、レイアウトや陳列の問題から売り逃しが多いと感じている。
  • 江田マネジャーの指導は緻密だと社内でも評価を受けており、E店やF店にもD店同様に厳しく、細かい指導をしている。
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さて、あなたは須藤店長に対してどのように指導しますか?

考え方のポイント&解説

これは【上司からの指摘を素直に受け止められない社員への指導方法】について考えるケーススタディです。上司が部下の仕事をチェックして、問題を指摘することは、組織目標を達成するために当然であると言えます。しかし、中には、上司の口調や語気の強さ、言葉づかいにばかり意識が行き過ぎて、上司からの指摘を素直に受け入れられない部下もいるようです。

このケースような事象が起きてしまう原因は、須藤店長のレジリエンスの低さにあります。レジリエンスとは、ネガティブな状況に陥った場合でも、それを引きずらず、速やかに元の状態に戻って判断・行動できる心の力をいいます。一般的には「精神的回復力」「ストレス適応力」「しなやかさ」「弾力性」等と表現されます。

レジリエンスの低い人には、以下の5つの特徴があります。

1過度な自己批判
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失敗や良くない結果が起きた原因をすべて自分の責任であると考える。責任感が強い人、自分に自信がなく自己批判することで集団の中での立場を守ろうとする人に多い。

2相手の理解不足
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相手の事情や立場を慮れず、「普通ならできる」「~と考えるのが当たり前」と常識やデータ、論理から性急に結論を導き出し、それに該当しないものにネガティブな感情を抱く。論理性の高い人、思いやりに欠ける人に多い

3事実と感情の混同
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周囲からの指摘や指導の内容を冷静かつ客観的に受け止めることができずに、その時に湧き上がった「イヤだ」「責められている」「怖い」等、負の感情を抑えきない。論理性が低い人、自信がない人、感情が抑制できない人に多い

4主観的な解釈
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とにかく自分が一番大事。自分が傷つくこと、自分が損することに敏感で、傷つかない理由、損しない理由を懸命に探す。利己的な人、承認欲求の強い人に多い

5悲観主義
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できない理由に目を向け、リスク要因を過大に評価する。取り組む前から「どうせ無理」 「やっても無駄」と考える。自己肯定感の低い人、慎重で保守的な人に多い

須藤店長は、江田マネジャーに対して「私にばかり厳しい口調で細かく指摘する」と受け止め、ネガティブな感情を抱いています。また、自分なりに一生懸命やっているのだから、対応をソフトにしてほしいと主張しています。

しかし、D店の人件費が高いこと、売り逃しが発生していることは、事実です。そこから目を逸らして、江田さんの言動や立ち振る舞いの良し悪しに注意を向け、事実と感情を混同しています。これは、レジリエンスの低い人の特徴③に該当します。

このような須藤店長を指導するポイントは、事実と感情を分けて、事実(=起こった出来事)に注目させることです。

須藤店長には、以下のように問い掛け、事実への注目を試みましょう。

  • 「D店の人件費率は何%? それに対して、会社の基準値はどれくらい?」
  • 「E店とD店の客単価はそれぞれどれくらい? D店の鮮魚はどれくらい売れているの?」
  • 「E店の客単価がいいのは何故だと思う? 店長に確認した?」
  • 「E店やF店は、江田マネジャーからどんな指導を受けているだろう? 本人たちに聞いてみた?」

D店の人件費率が基準よりも2%高いという事実やトータルの客単価や鮮魚の客単価がE店と比較して5%低いという事実が見えてくれば、江田マネジャーの指導が事実に基づいていることが理解できます。また、E店やF店の店長にも話を聞けば、江田マネジャーが須藤店長にばかり厳しく、細かい指導をしているわけではないことも理解できます。

言い方や語気の問題にせず、事実を直視させ、どのような感情が湧いてくるのか、どんな気持ちになるのかを問いましょう。それが、上司からの指摘を素直に聞く、土台作りとなるのです。