コラム

新人・若手社員の告白シリーズ③あなたの周りの“神対応”上司

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私たちが社会に出たとき、『どんな人に出会うか』がその後の人生や仕事観に影響を与えることがあります。とくに上司との出会いは、さまざまな経験をもたらすキッカケになります。仕事で失敗したとき、私生活での出来事が仕事に悪い影響を及ぼしているとき、自分を助けてくれる上司に出会うと、「まるで“神様”のようだ」と尊敬の念を抱くこともあるかもしれません。しかし、神様だと思える上司と出会えるかは運次第であるとも言えます。

そこで本記事では、上司が“神様”のような対応―俗に言う『神対応』をしてくれた経験があるかを聞いてみました。その結果をご紹介いたします。

※本記事の編集にあたり、現在、仕事をしている20~40歳の1000名を対象にアンケートを実施しました。質問は「あなたは今までに「神対応」をしてくれる上司に出会ったことがありますか?(選択式)」と「その上司がしてくれた「神対応」とは、具体的にどんな内容ですか?(記述式)」です。記事内では有効回答として得られた954名の回答の集計結果を公開させていただきます。

<目次>
  1. “神対応”上司に出会える確率
  2. “神対応”の具体的なエピソード
  3. 部下が”神対応”と感じるとき
①“神対応”上司に出会える確率

Q今までに”神対応”をしてくれる上司に出会ったことがありますか?

ある:272人(28.5%)
ない:682人(71.5%)

……おそらく、記事をご覧の皆様の中には「予想通り」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。『上司に”神対応”をしてもらった経験』の有無を調べたところ、『ある』と『ない』の全体比率はおよそ【3:7】という結果になりました。

性別でもこの比率に大きな差は見られませんでした。

●性別による比率
ある ない
男性 135人(28.8%) 334人(71.2%)
女性 137人(28.2%) 348人(71.8%)

年代別による割合もおおむね【3:7】と言っていい結果になりましたが、5歳刻みで層別した場合、他の層と比較して【30-34歳】という層が低い結果になっています。彼らが社会に出たのは、高卒で2009~2013年ごろ、大卒だと2013~2016年ごろと推測できます。

2009年はリーマンショックがあり、2011年には東日本大震災がありました。多くの企業は業績を立て直すのに必死な時期です。また、2013年には「ブラック企業」という言葉が流行語大賞のトップテンにランクインした年です。ブラック企業と呼ばれないためにどうすべきか、社会全体の意識が高まり、部下とのコミュニケーションにもナーバスになりました。
そんな背景が影響をしているのかは定かではありませんが興味深い数字です。

●配偶者の有無による比率 男性
ある ない
既婚 56人(41.5%) 79人(58.5%)
未婚 79人(23.7%) 255人(76.3%)
●配偶者の有無による比率 女性
ある ない
既婚 61人(35.3%) 112人(64.7%)
未婚 76人(24.4%) 236人(75.6%)

配偶者の有無で比較すると、男女ともに既婚者のほうが『ある』の割合が高くなっています。もしかしたら、家庭を持つ社員や妊娠中の女性社員、子育て中の社員に対しては、上司も特に気を遣う傾向にあるのかもしれません。最近では“ワークライフバランス”という概念も浸透しており、上司も「私生活(特に育児や学校行事)を優先する部下」を受け入れる傾向が強くなっているように思います。

●雇用形態・職種による比率 男性
ある ない
パート・アルバイト 11人(16.2%) 57人(83.8%)
派遣 6人(21.4%) 22人(78.6%)
医療 2人(40.0%) 3人(60.0%)
会社員 98人(31.0%) 218人(69.0%)
公務員 11人(39.3%) 17人(60.7%)
自営業 7人(29.2%) 17人(70.8%)
●雇用形態・職種による比率 女性
ある ない
パート・アルバイト 28人(18.3%) 125人(81.7%)
派遣 14人(25.9%) 40人(74.1%)
医療 6人(31.6%) 13人(68.4%)
会社員 77人(33.5%) 153人(66.5%)
公務員 7人(43.8%) 9人(56.3%)
自営業 5人(38.5%) 8人(61.5%)

回答者の母数が異なるため単純な比較はできませんが、全体比率の【3:7】と比べると、パート・アルバイト・派遣といった非正規社員の方や、公務員の方の比率に特徴的な結果が見受けられました。
非正規社員の方の場合、”神対応”上司に出会う確率が低い傾向にあるようです。もしかしたら、無意識のうちに「非正規社員よりも正規雇用社員に気を遣ってしまう」上司が一定数いるということかもしれません。また、部下も「正社員ではないので、上司と深く関わる気はとくにない」「ウェットな人間関係は望んでいない」とあっさりしている可能性もあります。
一方、公務員の場合は”神対応”上司に出会う確率が高い傾向にあるようです。民間企業と比較して、厳しい業績目標に追われることの少ない職種なので、上司に”神対応”をするだけの心の余裕があるのかもしれません。また、行政によるコンプライアンス指導の浸透や、高齢者や障害者への丁寧な対応の習慣化など、公務員ならではの環境要因が働いている可能性も考えられます。

②“神対応”の具体的なエピソード

“神対応”をしてくれる上司に出会ったことが『ある』と回答いただいた方には、具体的にどんなエピソードがあったのかも教えていただきました。いただいた回答を大まかにご紹介いたします。

1.ミスやトラブルのフォローをしてくれた
  • 接客中にお客様からセクハラを受けたとき、毅然とした対応で解決してくれた
  • お酒が苦手なのに周囲から勧められ困っていると、上司が隣に座ってガードしてくれた
  • 取り返しのつかないミスをしたが、上司が『正しく教えなかった上司の責任だ』と尻拭いをしてくれた
2.話を親身に聞いてくれた・励ましてくれた
  • 悩みの相談で2時間も付き合わせてしまったのに、嫌な顔をせずにずっと聞いてくれた
  • 私に出向の話が上がって悩んでいたとき、相談に乗るために飲みに誘ってくれた
  • 小さいことでも謝っていたら、『謝らなくていい、謝ることが違う』と諭してくれた
3.丁寧にアドバイスをくれた・サポートしてくれた
  • 営業を始めたばかりで成績を上げられず悩んでいたら、アドバイスをまとめた資料を作ってくれた
  • 忙しくても私のために時間を割いて、分かりにくいところなどを説明してくれた
  • 残業してまで仕事を手伝ってくれた上に、飲み物を買ってくれた
4.部下の代わりに行動を起こしてくれた
  • 有休が取れずに消えそうなとき、Excelで部下全員分の残り有休数を計算して『早めに取った方がいいよ』と呼び掛けてくれた
  • 人員が少なくて苦しかったとき、勤務環境の改善を上に掛け合ってくれて、実際に改善された
5.事情を配慮してくれた・融通を利かせてくれた
  • 有給申請に上司の承認の印鑑が必要だが、『取りたいときにいつでも押していいよ』と自分の印鑑を渡してくれた
  • 子どもの病気で仕事を休まなければいけないときも、嫌な顔せず対応してくれた
  • 交際相手が緊急事態になったとき、休みを許してくれた
6.日頃から気にかけてくれた
  • お弁当屋さんで働いていたとき、私の祖母が一人暮らしなのを気遣ってくれて、いつも祖母の分のお弁当を作って持たせてくれた。
  • 仕事に慣れていなかった頃、困っているといつでも声をかけてくれて、アドバイスをくれた。
  • 病休から明けたとき、体調や仕事の負担などを気遣ってくれた
③部下が”神対応”と感じるとき

ここまで上司が”神対応”をしてくれた経験についてご紹介しました。
普通の人にはなかなか真似できそうにない素晴らしい心遣いから、日常のちょっとした気配りまで、様々な出来事を挙げていただきました。

さて、結局のところ”神対応”とは何なのでしょうか?
各エピソードから分かることは、”神対応”をしてくれる上司の方々が、『部下が抱えている悩みごと・困りごとや、ストレスの要因』を読み取るのが非常に上手であることです。
『部下が助けを必要としている場面で、上司が適切に助けてあげること』が、彼らの言う”神対応”であると言えるでしょう。

ここで、②で挙げたエピソードの見方を変え、『上司が“神対応”をしてくれたと感じたとき、部下はどんな状況にあったのか』に注目してみましょう。
その視点でそれぞれの出来事を捉えてみると、部下がどのようなときに悩みを抱え、ストレスを感じるのかが見えてきます。

1.仕事に慣れていないとき

新しい仕事に取り組んだり、苦手とする仕事を任されているときは、思うように進まないものです。作業に手間取ってイライラしたり、失敗や周囲の目を気にして不安になったりする場合もあります。
そんなとき、【丁寧にアドバイスをする・サポートをする】【日頃から気にかける】など、上司が支えになってくれると心強いことでしょう。

2.ミスをしたとき・トラブルに遭ったとき

仕事でも私生活でも、不測の事態が起きたとき、涼しい顔でいられる人は多くありません。
周りから見れば『大したことではない』と思えることも、本人にとっては大ごとに感じられるのもよくある話です。
部下の不安を取り除くためにも、上司が【フォローをする】などの冷静な対応をしてあげましょう。また、トラブルによって業務に影響が出そうな場合でも、上司が【融通を利かせる】など、柔軟に対応してくれると部下も安心できるかもしれません。

3.体調が悪いとき・疲れているとき

体調が万全でないときに仕事に集中するのは、誰にとってもつらいものです。加えて、環境によっては『休めない』『休みたいけど言えない』といった状況も重なり、なおさら苦しくなってしまいます。
そんなとき上司は、部下の体調を配慮して【融通を利かせる】などの対応が求められます。また、社員が休みづらい職場環境ならば、改善のために【部下の代わりに行動を起こす】といった判断も必要な場合があります。

4.つらいことを我慢しているとき

人はつらい出来事に悩んでいても、それを誰にも共有できない状況に置かれることがあります。それは、そもそもの出来事から受け取るつらさとは、また別のつらさを感じるものです。
部下がこうした悩みを抱えていることを察知し、【話を親身に聞く・励ます】などの気配りを見せることも、人生経験の豊富な上司が成せる業と言えるでしょう。
また、部下が悩んでいる様子がないか、【日頃から気にかける】など常に意識し、お互いに話しやすい関係を築くのも大事なことです。

『上司の”神対応”』というテーマで解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
ここで言う“神”とは、決して『何をしても許してくれる人』を指すのではなく、『助けが必要なときに、見捨てずに助けてくれる人』なのです。
また、『誰に対しても』『どんな時でも』手を差し伸べ続けるというスタンスが重要であることも付け加えておきます。部下も「上司だって本当は忙しくて大変なのに…」と分かっているからこそ、忙しい時に、自分の些細な悩み事やトラブルに、真摯に対応してくれる上司に感謝や尊敬を込めて”神”と呼んでいるのでしょう。

しかし、『言うは易く、行うは難し』です。
上司だって人間で、神様のように全知全能ではありません。自分が忙しい時に、部下に気を遣う気持ちの余裕がない場面もたくさんあるでしょう。それでも、“何気ない神対応”を継続できる上司は、どんな時でも目的から思考し、やるべきことに集中できるレジリエンスの高い人材だと言えるでしょう。

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