コラム

新人・若手社員の告白シリーズ⑥あなたの会社の”自慢の福利厚生”

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多くの企業は「誰かを笑顔にしたい」という想いを持って事業を営んでいます。そして、企業が笑顔にする「誰か」には、“お客様”だけでなく“自社の社員”が含まれることは、今日では周知の事実となっています。

では、自社の社員を笑顔にするものとは何でしょうか?
給与や賞与などの報酬、社会の役に立っていると実感できる誇り、お客様や仲間からの「ありがとう」によってもたらされるやりがいなど、多くのものがイメージできます。その中で、今回は福利厚生を取り上げてみたいと思います。

過去を遡れば、『自社の保養所』から『スポーツジムやリゾートホテルの会員加入』『オフィス内のワインセラーやビリヤード台』まで、実に多種多様な福利厚生の例が挙げられます。「福利厚生は、その企業の個性や価値観が反映されているのです」と断言できたらカッコいいですが、そのような企業はごく一部であり、多くの企業は「月並みな」「パッとしない」等の言葉で形容されるものがほとんどです。

そのような中、近年では労働力の不足による採用難から、福利厚生を充実させることで人材の獲得・定着を目指す企業が増えてきました。
また、そうした社会の流れに着目し、オフィスグリコやESキッチンのように、法人向けに福利厚生をサポートする新しいサービスを提供する企業も登場しています。
そのような新しい潮流の中で、現代の福利厚生は、社員の「この会社で働きたい!」という意欲を上げるという効果を果たしているのでしょうか?

そこで今回は、企業で働く社会人を対象に「あなたの会社の自慢の福利厚生」について聞いてみました。その結果をご紹介いたします。
(なお、育休制度や社会保険など、『法定福利』は対象外としています)

※本記事の編集にあたり、1000名を対象にアンケートを実施しました。質問は「あなたの勤務先の福利厚生の中で『満足度が高い』『他社よりも充実している』と感じるものは何ですか?」と「その福利厚生は、あなたの『働きやすさ』や『働く環境』にどのような効果をもたらしていますか?」です。記事内では有効回答として得られた962名の回答の集計結果を公開させていただきます。

①福利厚生の有無とジャンル

初めに「あなたの勤務先の福利厚生の中で『満足度が高い』『他社よりも充実している』と感じるものは何ですか?」という質問に対する回答を見てみましょう。

まず、いただいた回答を基に、自社に充実した福利厚生が『ある』グループと『ない』グループに振り分けてみました。結果は以下の通りです。

ある :232人(25.3%)
ない :719人(74.7%)

このように、自社に充実した福利厚生が『ある』と回答したグループは、全回答者の4分の1でした。

次に、『ある』と回答したグループの自由記述に記された『福利厚生の詳しい内容』について、17種類のジャンルに振り分けた結果を一部抜粋してご紹介します。

表1
1.手当 ・家族手当、子供手当
・介護支援金
2.ボーナス・祝い金 ・結婚祝い金
・エクスペンド費用の付与
・年末年始のお土産、お年玉
3.物品支給 ・制服の支給
・PCや社用携帯の費用補助
4.社販・社割 ・自社製品の割引(医薬品、服飾品など)
・自社サービスの割引(ホテル、エステなど)
5.休暇付与 ・1週間分の連休
・有休取得可能数の引き上げ
・誕生日休暇、メモリアル休暇
6.社内行事 ・社員旅行
・ボウリング大会、果物狩り
・食堂での飲み会(勤務時間中でもOK)
7.余暇促進 ・リゾート等の保養施設
・宿泊費や旅費の補助
・アミューズメントの割引、芸術鑑賞の割引
8.住宅補助 ・家賃補助
・社宅、社員寮
9.通勤補助 ・社員専用の駐車場
・ガソリンのビジネスカード
・道路料金の全額補助
10.食事補助 ・社員食堂、カフェテリア
・お菓子のブース、牛丼の自販機
・食事代補助
11.育児支援 ・時間単位での育休、子供の看護休暇
・社員専用の託児所
・ベビーシッター補助券
12.健康支援 ・予防接種や健康診断の費用補助
・医療保険の会社加入
・スポーツジムの割引、社内ジム
13.学習支援 ・資格手当
・書籍代の全額補助
14.キャリア支援 ・配偶者同行休業制度
・独立支援
15.勤務形態 ・リモートワーク、在宅勤務
・フレックスタイム制
16.資産運用 ・持株会、社内預金
17.ポイント制度 ・外部の福利厚生サービスのポイント付与
(誕生日ギフト、旅行費、アメニティなど)
・シニア研修受講時のポイント贈呈

実にさまざまな福利厚生が施行されていることが分かります。

上記のジャンルの中で、回答として挙がった件数の多かった上位5件は以下の通りです。

  1. 余暇促進(46人/18.9%)
  2. 健康支援(33人/13.6%)
  3. 休暇付与(31人/12.8%)
  4. 食事補助(24人/9.9%)
  5. 住宅補助(20人/8.2%)

『社員の満足度が高い』『他社よりも充実している』と感じる福利厚生と聞くと、他の会社では見られない独創的なものをイメージするかもしれません。ですが回答に寄せられたラインナップを見ると、いわゆる“普通の”内容のものが多いことが分かります。
皆さんは上記の回答を見て、「この企業で働いてみたい!」と感じた福利厚生はありましたか?企業の採用活動では、“自社の魅力”として福利厚生を紹介する企業が増えています。しかし、例えば『通勤補助』や『住宅補助』のように、“地味”でインパクトを欠く福利厚生をアピールしてもなかなか求職者を惹きつけることができません。

このあたりは我々の意見だけで「こちらが正解」と断定することはできません。しかし、「毎日食べるならフランス料理のフルコースよりもご飯と味噌汁」の格言(⁉)のように、地味で普通だけれども利用機会の多い福利厚生の威力を侮ってはいけないような気がします。

②福利厚生の効果

福利厚生のジャンルとラインナップを紹介しましたが、それらによって社員の『働きやすさ・働く意欲』はどれほど向上しているのでしょうか。
アンケートでは『社員の満足度が高い』という観点で福利厚生を挙げていただいていますが、それらが「社員の働く環境に効果を与えているか」に着目して見てみましょう。

以下は、充実した福利厚生が『ある』グループの回答者242名が、「あなたの『働きやすさ』や『働く環境』にどのような効果をもたらしていますか?」という質問に対してどのように回答したのかを統計した結果です。福利厚生の効果について自由に記述していただいた内容を基に、『効果あり』『効果なし』のグループに振り分けてみました。

効果あり:206人/84.8%
効果なし:37人/15.2%

また、【①福利厚生の有無と種類】で挙げた件数上位のジャンルにおける、『効果あり』の割合は以下の通りです。

表2
1.余暇促進 84.8%(46人中39人)
2.健康支援 87.9%(33人中29人)
3.休暇付与 93.5%(31人中29人)
4.食事補助 95.8%(24人中23人)
5.住宅補助 90.0%(20人中18人)

このように、多くの企業で福利厚生として採用されているジャンルは、概ね効果を感じている人が多いようです。
次に、『効果あり』グループの回答者の割合が90%以上だったジャンルをピックアップしてみました。

表3
1.休暇付与 93.5%(31人中29人)
2.食事補助 95.8%(24人中23人)
3.住宅補助 90.0%(20人中18人)
4.勤務形態 100%(6人中6人)
5.通勤補助 100%(5人中5人)
6.キャリア支援 100%(2人中2人)

回答者の数に偏りがあるため、母数が少ないほど割合が極端になってしまう点は注意しなければなりませんが、概ね上記のジャンルは効果を実感しやすいものと思われます。
これらのジャンルの多くに共通する特徴として、『労働環境の改善に直接かかわる』『利用する機会が自然に生じる』という点が挙げられます。『食事補助』をはじめ、通勤中や休憩中も含む就業時間内において(利用条件を満たしていれば)いつでも利用できる福利厚生ならば、その利益を日常的に得ることができ、社員も「快適な環境で働いている」という実感も得やすくなるのでしょう。

③福利厚生の効果を高める施策

福利厚生に対して社員がどれほどの効果を感じているかを説明しました。もちろん、どのような内容の福利厚生でも、効果を感じるかは社員個人の主観も含まれており、『効果を感じない社員がいる=会社の施策が間違っている』というわけではありません。
ただし、福利厚生の利用をめぐって、社員間に格差が生じている場合には注意が必要です。例えば、福利厚生に『余暇促進』『休暇付与』を施行している場合、『業務が忙しい社員』と『業務に余裕がある社員』とでは、休日の取りやすさ…すなわち福利厚生を利用する機会に差が生まれます。特定の社員だけが福利厚生の恩恵を享受できる状況は、享受できない側の社員が不公平感を抱くきっかけとなり、「この会社で働きたい!」という意欲の低下を招きかねません。これでは、福利厚生の本来の目的とは逆の結果となります。
【表3】の解説でも述べたように、社員にとって満足度の高い福利厚生の特徴は、『日常的かつ自然に利用できる』こと、言い換えれば『利用する際のハードルの低さ』なのです。今回のアンケートのテーマが“福利厚生”であるにも関わらず『有休を取りやすい“社風”』といった回答が寄せられたことからも、社員は「いつでも誰でも利用できる環境」を“自社の優れている点”として認識していることが伺えます。

では、福利厚生の効果をできるだけ多くの社員に感じてもらうには、“利用ハードルの低いジャンル”に厳選して導入する必要があるのでしょうかと言えば、そうではありません。
ジャンルに関係なく、利用のハードルを下げる工夫をしていかなければなりません。

以下は「利用率が低い福利厚生」に対して企業側が実施した対策の事例です。

例1利用手順が複雑な場合
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…置き型の社食を導入したものの、キャッシュレス決済しか対応しておらず、キャッシュレス決済に縁遠い年配の社員やパートがほとんど利用しなかった

対策

高齢の社員・パートに対して、アプリインストールとキャッシュレス決済の手順をレクチャーする

例2社員の興味関心が薄い場合
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…社員の自己研鑽をサポートすべく、上限なく図書費の利用を認めたが、元来多忙で、学習習慣のない社員はほとんど利用しなかった

対策

会社側から課題図書として書籍を配布し、感想文・レポート(→形式自由。1行でも可)の提出を求め、レポートを提出した社員に奨励金を支給する

このように、福利厚生の効果はジャンルや内容によって定まるものではなく、適切な運用施策を講じて高めるものなのです。

福利厚生の種類と効果について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
お客様が製品やサービスに興味を持ち、実際に使用して喜んでもらうまでの一連の出来事を『顧客体験価値』といいます。企業はお客様が感じるその価値を高めるよう、さまざまな工夫を凝らします。福利厚生が自社の社員に対しての“製品・サービス”の1つならば、いわゆる『社員体験価値』を高める工夫は必須です。

社員のためを思って福利厚生を用意したとしても、社員がその恩恵を享受できているか、つまり“本当に社員のためになっているのか”まで意識を向けなければ意味がありません。

福利厚生は運用次第で、社内全体を活気づける原動力にも、不満の温床にもなり得ます。経営者も、社員も、自社の福利厚生は社員にとってどんな意味と価値があるのか、あらためて考える機会としてみてはいかがでしょうか。

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