コラム
新人・若手社員の告白シリーズ⑩生成AIが「仕事の仕方」に与えた変化

2022年11月30日、OpenAI社によってリリースされた文章生成AI『ChatGPT』は、世界中に衝撃を与えました。同年8月に公開された画像生成AI『Stable Diffusion』とともに、人間が作成したものとほぼ区別がつかないほど精巧な結果を出力する生成AIが登場したことで、私たちの社会はそれらを受け入れるために急速な変化を求められています。
とは言え、生成AIの日常的な利用を巡ってはいまだに賛否両論が交錯しています。回答の精度や信ぴょう性、学習データの著作権の有無、さらにはAIへの依存による思考力・学習能力の衰えなど、その影響やリスクについては社会全体としても明確な結論には至っていません。
では、こうした状況の中で、実際の業務に生成AIを取り入れ、有効活用できている人はどれくらいいるのでしょうか?
そこで今回は、企業で働く20~60代の社会人を対象に「仕事でのAIの利用状況」を調査し、その結果をご紹介いたします。なお今回のアンケートでは、生成AIサービスだけでなく、AIによる補助機能を搭載したアプリ(Photoshopの背景拡張機能など)も生成AIに含むものして回答いただいています。
本記事の編集にあたり、1000名を対象にアンケートを実施しました。今回は「あなたは仕事でAIを利用していますか?」「あなたは仕事において、どの作業(あるいはどんな場面)にAIを利用していますか?」など、AIの利用頻度や用途について質問いたしました。記事内では有効回答として得られた965名の回答の集計結果を公開させていただきます。
はじめに、「あなたは仕事でAIを利用していますか?」に対する回答の比率を世代別に見てみましょう。
全体
20代
30代
40代
50代
60代
仕事でAIを『使っている』と答えた人は、回答者全体の約20%でした。年代別に見ても、多少の差はあるものの、比率はおおむね変わりません。文章作成やアイディア出しなど、生成AIが得意とする分野のほとんどがデスクワークの業務に属することから、生成AIを使う余地のある仕事に従事している一部の人に比率が偏った結果であると推察されます。
では、AIを利用している人の割合が多いのは、どの業種でしょうか?
回答者の基本情報に含まれている【業種】の項目を、『使っている』の回答の割合が多い順に並べてみました。
母数に差があるため厳密な比較は難しいですが、それを差し引いても『情報通信業(IT)』が他の業種よりも抜きん出る結果となりました。IT業界は、単にデスクワークが多いだけでなく、デジタルデータを扱う業務が中心であることから、この結果は想定通りです。 また、『使っている』の割合が最も低かった業種は『医療・福祉』でした。特に医療業界では、生成AIの誤操作や誤答が発生した場合に重大な損害(医療事故や個人情報の漏洩など)を招く可能性が高く、生成AIの業務利用については政府や研究機関によって厳しいガイドラインが設けられています。したがって、こちらも当然の結果と言えるでしょう。
人々が生成AIに興味を持ち『自分も使ってみよう』と思うようになったきっかけは、冒頭で挙げたStable DiffusionおよびChatGPTの登場だったと言っても過言ではありません。その後も新しいAIツールが生まれる中、実際に仕事で使われている割合が多いのはどのツールなのでしょうか? そこで、「あなたが仕事で利用しているAIサービス、またはAI搭載ツールは何ですか?」という質問に対する回答結果を見てみましょう。以下のグラフは、自由記述による回答を基にツール別の得票数を算出した結果を表したものです。
複数の回答者が挙げたツールは『ChatGPT』『Google Gemini』『Microsoft Copilot』の3つに絞られ、回答者が1名だったツール(Claude Code、Perplexity、Grok、Lightblueなど)は『その他』にまとめました。
こうして見ると、やはりChatGPTの普及率には目を見張るものがあります。とは言え、ChatGPTを運営するOpenAI社は設立間もないことから、Google社やMicrosoft社などインターネットの黎明期からサービスを展開している大手IT会社のツールのほうが(とくにセキュリティ面で)信頼できるという声が一定数あるのも確かです。Google WorkspaceやMicrosoft365など、会社によってはすでに法人として導入しているサービスと連携しやすいという利便性も、これらのツールが使われる理由と思われます。
仕事で生成AIを『使っている』と回答した191名(うち有効回答は179名)を対象に「あなたは仕事において、どの作業(あるいはどんな場面)にAIを利用していますか?」と質問した結果を見てみましょう。
この質問では、『文章作成』『文字起こし』をはじめとする15通りの作業カテゴリの中から、複数選択を可能とした上で該当するものを選んでいただきました。それぞれのカテゴリを、得票数が多かった順に並べ替えた結果は以下の通りです。
ランキングの上位には、『文章作成』を筆頭に『情報収集』『資料作成』など、「業種・職種を問わず必要とされる業務」が挙がりました。これらの普遍的な業務は発生する頻度も非常に高く、仕事の時間の多くを占めるため、生成AIによる効率アップを望む人が多いと推察されます。
ここまで、仕事で生成AIをどのように利用しているかを見てきました。生成AIを業務に採り入れる人が一定数いることは分かりましたが、業務で活用する以上、要求に沿った結果が出力されなければ意味がありません。
そこで、「AIがあなたの期待通りの結果を出力する割合はどれくらいだと感じますか?」という質問の回答結果を見てみましょう。先ほどの質問で挙げられた3つの主要ツールに対して、出力結果にどれほど満足しているかをまとめたところ、以下の結果が得られました。
- 81-100%
- 61-80%
- 41-60%
- 21-40%
- 0-20%
- 81-100%
- 61-80%
- 41-60%
- 21-40%
- 0-20%
- 81-100%
- 61-80%
- 41-60%
- 21-40%
- 0-20%
ChatGPTの利用者が最も多いことはすでに述べた通りですが、グラフの分布を見ると、満足度の高い利用者の割合はGoogle Geminiが最も多いように見えます。比較しやすくするために、各ツールにおける満足度の平均点を算出してみました。各選択肢の割合の中間値(例:『81-100%』→90点)を点数として合計点を計算し、母数で割った値を平均点と見なしています。
平均点の高い順にツールを並べ替えた結果は以下の通りです。
| Google Gemini | :60.6点(1940点/32人) |
|---|---|
| ChatGPT | :54.6点(5460点/100人) |
| Microsoft Copilot | :53.0点(1430点/27人) |
どのツールの満足度も拮抗していますが、Geminiはシェア率の高いサービスを多く展開するGoogle社のツールだけに、出力精度や利便性の高さが満足度につながっている可能性が高いでしょう。
さて、ここで最後の質問である「仕事でAIを使うようになってから、どんな変化がありましたか?」に対する回答について解説いたします。
今回寄せられた回答の中で、圧倒的に多かったのは『手間が減った』『作業が速くなった』など時間短縮・効率アップに関する回答でした。それらの中から一部を抜粋してご紹介いたします。
- 事務作業の手間が減って、残業時間が減った
- 生成AIに質問することで、上司の回答を待つ時間が減った
- 簡単な仕事をAIに任せて、自分は高度な仕事に時間を使えるようになった
また、少数ながら『作業のクオリティが上がった』など作業品質に関わる回答も見受けられました。以下に紹介するのは、それらの回答の一部です。
- より適切な表現を使ったメールを送れるようになった
- 調べた情報が本当に合っているのか確認できるようになった
- OSのエラーが起きたとき、以前は自分で気づけなかった解決方法が見つかるようになった
このように、生成AIが改良を重ねることで出力結果の精度が向上した結果、時間短縮だけでなく作業品質の向上も図れるようになったことは、ビジネスマンとして注目に値するでしょう。
実は『作業品質の向上』を変化として挙げた回答者の傾向を見ると、「生成AIの用途」の質問で『アイディア出し』を挙げている方が多いことが分かりました。なお、彼らは「AIが期待通りの結果を出力する確率」について、半数以上が『61-80%』あるいは『81-100%』と回答しており、生成AIが提示するアイディアにおおむね満足していることも分かります。
アイディア出しの作業には明確な正解がないため、生成AIを利用しても最終的には自身が判断を下す必要性が高いという性質があります。作業品質への意識が強い人ほど、生成AIを「自分の代わり」よりも「手段・道具」として認識する傾向が表れているかもしれません。
生成AIによる仕事の仕方の変化について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
生成AIの精度は短い期間で急速にアップデートが進んでおり、以前からまことしやかに囁かれてきた『AIが人間の仕事を奪う』という懸念も、一部の地域・業種ではすでに現実化しているとも言われています。
このような情勢で私たちに求められるのは、生成AIの進化によって「より早く・簡単にできるようになること」だけでなく「人間だけができること」も明確になる中で、それを見極め、キャッチアップする力ではないでしょうか。
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